『瑞猿献寿』(ずいえんけんじゅ)
『瑞猿献寿』は猿たちが手に桃を持った様子を描いたものである。 桃は寿桃・仙桃・蟠桃(バントウ)といわれ長寿のシンボルである。中国最古の薬物学(本草学)の『神農本草経』という本の中では「玉桃を食べたら人は不老不死になる。早いうちに食べなかった人でも、死ぬ寸前に食べたら、その死体は朽ちないものとなる」と記されている。つまり、寿桃や仙桃、蟠桃や玉桃は不可思議な桃のことを意味している。また、『山海経』の中では、桃の樹がその世界樹であり、鬼は東北の門から出入りしていたと書かれている。桃は悪鬼を退治するというイメージができるもとになった記述である。中国では悪鬼を退治する弓も矢も、桃の木を使わねばならない。日本の神社の破魔矢も本来は桃の木で作られている。仙人の持っている杖も桃杖といわれ、桃の木で作られている。 猴は同音異義語が「侯」であり、王侯や侯爵など官僚機構のトップに位置する意味合いが込められている。猿の親子像や子供を背負った像が多く見受けられるが、その場合は「輩輩封侯」となり、代々侯爵になるという吉祥とされる。従って、猿が桃を持っている図柄は、長寿と官位昇進を兼ねた、お目出度の重なったデザインになる。